2025「ライチョウ観察会」第2回目を催行しました
6月30日~7月1日、燕山荘ツアー「ライチョウ観察会」第2回目を催行しました。
梅雨の季節に行うライチョウツアーは、標高1462mの登山口から2763mの頂上まで、約1300mの標高差を登ります。その間に山地から高山、高山と生物相が変わっていく合戦尾根は、山の自然学の格好の教材です。
「ライチョウがかなり遠くからでも、見る事ができよかった」
「白樺やナナカマドにもいろんな種類があるのが分かって、興味深かった」
「講師の植松さんの野鳥や草花の話が聞けて良かった」
合戦小屋まではナナカマド、以降はウラジロナナカマド、タカネナナカマドと標高に応じて3種類のナナカマドを楽しむことができます。キソチドリ、イチヨウラン、ハクサンチドリと3種類のランが標高に応じて咲いています。
▲ミヤマハンショウヅル
頂上直下のミニ花壇には、様々な花に囲まれてミヤマハンショウヅルが一輪だけ咲いていました。たぶん燕岳ではここにしか咲いていない花でこの季節しか見ることができない花です。そして毎回新しい発見があります。
▲イルカ岩の口の中:クモマスミレ
▲目の涙:イワヒゲ
イルカ岩のイルカは口にクモマスミレを咥え、目にはイワヒゲの白い涙をたたえていました。これもこの季節ならではイルカの生態?です。
▲肝心のライチョウは、
テント場トイレの雪渓下で確認することができました。しかも数日前に孵化した7羽のヒナを連れており、ヒナたちは親の周辺をあちこち動きまわり、寒くなればお腹の下にもぐって休み、見ているだけでほほえましい光景でした。母親は孵化したばかりのヒナに雪が融けて芽吹いたばかりの新鮮な柔らかい葉を食べさせようとしていたのでしょう。
居合わせた登山者によると、この日の朝オコジョが威嚇してきたがライチョウの親はすごい勢いで追い払ったということでした。
▲頂上近くのサル
▲キツネの糞
そういえば頂上までの岩の上で数匹のサルが佇んでおり、合戦小屋下には真新しいサルの糞が落ちていました。また稜線下の雪渓上にはキツネの足あとがありました。ライチョウと同じように、時には捕食者である様々な動物が生息していることもまた高山の生物相です。
▲エゾハルゼミ
▲メボソムシクイ
夕食後はライチョウの生態についてモニターを使っての解説。翌7月1日は登る時に見た花や野鳥を復習しながら歩き、特に全身真っ黒でフィーチチと鳴くホオジロの仲間クロジを間近で見ることができました。またうるさいほど鳴いていたエゾハルゼミを間近で見ることができ、多様な生き物が生息している燕岳の花と鳥と虫たちを心置きなく楽しむことができた2日間でした。
「ここから見る北アルプスの山々はどこにもない素晴らしい景色。これを見るために何度も燕岳に来てしまうんだなあ」参加者のひとりの方がつぶやかれました。ライチョウというフィルターを通して景観だけでなく燕岳の自然の豊かさや生物多様性を知ることが、ライチョウツアーの目的と言えるでしょう。
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【今回観察できた詳細】
野鳥(18種)
ライチョウ、ホシガラス、ハシブトガラス、イワヒバリ、カヤクグリ、メボソムシクイ、ウグイス、ヤブサメ、キクイタダキ、ミソサザイ、ルリビタキ、オオルリ、クロジ、ウソ、ヒガラ、コガラ、ツツドリ、ホトトギス、
植物(花が咲いていた主なもの、場所は一部重複)
【登山口~燕山荘】
[草本]タニギキョウ、イチヨウラン、キソチドリ、ミツバオウレン、バイカオウレン、ギンリョウソウ、マイヅルソウ、ゴゼンタチバナ、イワカガミ、ツマトリソウ、ヤマトユキザサ、タケシマラン、オオバキスミレ、ミヤマニガナ、シロバナニガナ、キソチドリ、イチヨウラン、
[木本]ミヤマニガイチゴ、ベニバナイチゴ、タカネザクラ、ナナカマド、ウラジロナナカマド、タカネナナカマド、アカモノ、コヨウラクツツジ、ウラジロヨウラク、オオバスノキ、クロマメノキ、クロウスゴ、ヤマツツジ、ムラサキヤシオ、オオカメノキ、チングルマ、
【燕山荘~燕岳】
[草本]コマクサ、シナノキンバイ、ミヤマキンポウゲ、ミヤマキンバイ、ヒメイチゲ、ハクサンイチゲ、ミヤマタネツケバナ、ヤマハタザオ、ウメハタザオ、コミヤマカタバミ、ミヤマハンショウヅル、ハクサンチドリ、クモマスミレ、ミヤマクワガタ、
[木本]イワウメ、イワヒゲ、コケモモ、アオノツガザクラ、
昆虫類
ヤマキマダラヒカゲ、クロヒカゲ、エゾスジグロチョウ、ミヤマカラスアゲハ、クジャクチョウ、エゾハルゼミ、
哺乳類
オコジョ(目撃情報)、サル(姿、糞)、キツネ(糞)
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講師:植松晃岳氏(野生生物資料情報室代表・信州野鳥の会会長)
燕山荘スタッフ:赤沼大輝
写真:植松氏、赤沼、河地
文:植松氏 赤沼
ご参加いただいた皆様ありがとうございました。
